●コロナ禍、何が正解か誰にも分からない

 

何を書こう、何を伝えよう。
この約1ヶ月、悶々としていました。

私はマルタの旅行、留学に関わる仕事をしています。
しかし、旅行会社でもない、留学エージェントでもありません。

かつては留学生でも、今は留学生や旅行者と、留学エージェントや旅行会社との間に立ち双方を繋ぐニュートラルな立場と思っています。

マルタの情報を発信し、本でも紹介していることから「マルタといえば林さん!!」と思い出してくださり、SNSで問い合わせやSOSも届きました。

その数が2月〜3月にかけて増えるにつれ、中間の立場だからこそ、見えてきた現状、聞こえた声。

―ニュートラルな立場としてどう動くべきか、どう発言すべきか―

各所と連携をとりつつ、気を配りながら発信を行い、考えを大いに巡らせた時間を過ごしたように思います。

渦中にいた旅行者と留学生、その方たちを安全に誘導するためにマルタ現地および日本で必死に働かれていた各会社さんや協力して下さった在住者の方のご苦労に比べると、比にはなりませんが。

 

 

●振り返り1:マルタの移り変わりとターニングポイント

 

マルタが比較的まだ落ち着いていた頃と、急激に変わり始めた頃の境はどこかにあったのか。

振り返ると、3/16に緊張感が高まり始め、急激に慌ただしくなったのが3/21、と日本側にいる私は感じました。

『新版 まるごとマルタのガイドブック』で取材協力してくださった、現地在住のマサさんが、情報をnoteに時系列でまとめてくださっています。
とても分かりやすいのでぜひご覧ください。

>>「マルタにおけるCOVID-19:時系列」

次々に公式発表される情報と、ニュース速報で流れる情報。
あの時は、複数の情報がこんがらがり混沌としていました。

現地にいるマサさんだからこそ、発表されるたびに移り変わる様を体感しながら、今は情報を振り返りながら書かれたのだろうと思います。

段々と焦燥感が高まっていった3/21までの日々と、それ以降もさらに高まる日々の様子が思い起こされます。

 

そんなマサさんの記事「マルタにおけるCOVID-19:時系列」より引用させていただきながら振り返りを。

緊張感が高まり始めたのは3/16。

3月16日:初の国内感染確認および規制強化の発表

具体的な内容は、
・17日23:59から、レストランやバー、クラブ、カフェ、映画館、ジム、ビンゴホールなどの閉鎖。
・レストランはテイクアウェイ並びにデリバリーのみ営業可能に。
・自己検疫の違反者への罰金が3,000ユーロに引き上げ。
・国外にいるマルタ人に対して、帰国の呼びかけ。
・国内に止まる旅行者に対して早めにマルタを去るよう呼び掛け。
・エミレーツ航空はこの日を最後にドバイマルタ間の運航を停止、5月20日に再開予定と発表。

「初の国内感染確認」「エミレーツ航空の運行停止」

この時、留学・旅行関係者の方々と話していて、この2つの情報が、一気に緊張感を高めたように感じました。

マルタに乗り入れる中東系航空会社は、エミレーツ航空、ターキッシュエアラインズ、カタール航空の3つ。

中でも一番堅いであろうと思われたエミレーツ航空が、早々に運行停止を発表したことは衝撃でした。

これは、マサさんもnoteに書いてある通り、実質「フライト停止のフラグ」であり、私も「空港閉鎖へのカウントダウン」が始まったと感じました。

 

 

●振り返り2:マルタ怒涛の7日間と、情報発信の難しさ

 

SNSを見ると「これから旅行・留学に行こうかどうしようか」マルタに旅行・留学中の方は「帰るかどうか迷っている」という声が散見していました。

当事者であれば、確かに判断は難しい。

私が同じ立場であれば「行かない」「帰る」。
要は、現地に居らず自国(日本)に居るの一択でした。

きっとこれは、渦中にいないからこそ冷静に判断して言えるからかもしれませんが。

 

理由は、

★「行く」場合
万が一ウイルスを持ち込み、感染を広げる原因になったらどうするのか。
日本でも感染者はSNSで叩かれている人たちもいる。
きっとマルタでも同じようなことが起き、かつ日本人がウイルスを持ち込んだ、と在住日本人や滞在する留学生・旅行者まで非難されたでしょう。

★「帰らない」場合
この先確実に退路が絶たれ、混乱するのが容易に予測できました。
2週間の自己隔離を義務付けられた人もいる、そうでない人でも、次々と営業停止するお店が増え、ライフラインが絶たれていく中で、慣れない土地でどう生き延びていくのか。
栄養が取れず、免疫力低下で体調不良となった場合、病院に行くとまた感染リスクも高まる。
その場合、現地在住日本人が医療通訳を行わねばならない際は、その人にまで感染リスクを負わせることになります。

 

このように「行く」「帰らない」で起こる懸念点が考えられました。

日本では海外渡航自粛がまだ言われていなかった時期とはいえ、現地の状況を考えるとあまりの危険性とリスク。

「今は行くな」「今すぐ帰れ」、声を上げられるならば、そう呼びかけようかと本気で考えました。

様々な事情や背景をもつ人たちに向かって、一概に押しつけもできないため、悩みに悩んだ末、私はとある方に相談をしました。

SNSでは「こんな状況の中で留学する経験なんて中々できない。今だからこそ行く」という内容も見かけ、現地の人たちに迷惑をかけることすら想像できない無知な方もいたため。

しかし「それはできないよ、林さん」となだめられました。

 

理由は、
旅行業務取扱管理者であっても、旅行と留学をする人に帰国や渡航を指示することは違法に当たる。例えSNSでの呼びかけ、発信であってもそう取られかねない。

災害が起こった場合でも、救助のために帰国を指示することができるのが、資格を持った業者でもできるのがやっとのこと。

もし出来る方法があるとすれば、ギリギリのところで情報をにおわせ意図を感じ取ってもらい、帰国を決断させるよう促すことぐらい。私達にはそれしかできない。

ありがたい助言を理解し、可能な範囲での情報発信を行い、判断は当事者に委ねるしか無いという、他の方々と同じスタンスでいようと決めました。

 

その数日後、状況が一変。

3月18日:マルタ空港が21日からのフライト受け入れ停止を発表
・空港が20日23:59から到着便の受け入れ停止を発表。

ここから一気に、旅行会社も留学エージェントも、旅行者も留学生もバタバタと動き始めました。

もう「帰る」しかない、「行かない」しかない。

私が促すまでもなくとも、長期留学生を除き、帰国・渡航自粛を誰もが選択せざるを得ない状況となりました。

 

3月20日:空港の到着便受け入れ停止を政府発表
・正式に政府が発表。

 

こうして翌3月21日(土)の0時から、全旅客便の到着を一時的に全面禁止に。

3/21まで、数日で世界はガラリと変わり、帰国する留学生と旅行者と、その関係各所の方々も対応に追われました。

 

その後、

3月22日:不要不急の店舗営業の禁止を発表

イタリアのような完全なロックダウンとまではいきませんが、実質ロックダウンのような感じに。

おしゃべり好き、無駄に集まるのが好きなマルタ人が街から消えました。

観光立国であるマルタの街に、人がいない、寂しい光景。

 

ちなみに、規制が強化され緊張が高まっていた頃は、日本と同様マルタでも買い占めは起こりました。

マルタの買い占めはこの3点。
・トマトソース
・パスタ
・トイレットペーパー

これらがスーパーから消えました。

ドイツはソーセージ、イタリアもパスタと小麦粉だとか、買い占めで各国のお国柄が表れると言いますが、マルタでもこの通り。

 

・・・ここまで、怒涛の7日間を振り返りました。

無駄に情報を発信しすぎても不安を煽る。
勝手に発信しても、情報がばらけて情報の差異がでて混乱させる。
個別対応することで情報の差異が出ても混乱を招く。

よって、
事実だけを伝え、予測や裏付けの取れていない情報は発信しない。
SNSの誰もが見られる場所で発信し、クローズドでの問い合わせ対応は行わない。

これらを心がけ、私ができた精一杯のことは、現地と日本にいる関係者と連携をとり、裏付けが取れた正しい情報を伝えること、そこへ誘導すること。それぐらいか。

何が正しいのか、そうでないのか、色々と考えさせられた日々でした。

 

 

●ロックダウンから4週間経過、現在のマルタ

 

3/22の「不要不急の店舗営業の禁止を発表」を実質のロックダウンと捉えると、今日でちょうど4週間経ちます。

東京では4/8に緊急事態宣言が発令されたため、我々日本の2週間半ほど先を行くマルタ。

一昨日、マルタ在住の方と電話で話しました。

私が「先週4/8に東京都(を含む7都道府県)に緊急事態宣言が出され、次々とお店が閉店していく様子や、友人の会社が出勤停止を実施してテレワークに移行したりと、毎日移りゆく様を見るたびに、精神と感情の振れ幅がすごい。
普段ポジティブでやり過ごせる私でも、ちょっとしたことで涙が出てくるし、心が弱くなっているのが分かります。」
そう言うと、

「まさに2週間前のマルタ、東京は今が過渡期なんだね」と言われました。

その方曰く
「ロックダウンからの2週間は、毎日マインドが変わる」そうです。

マルタの状況に沿って考えると、私は同じ状況を辿っており予定調和ということでしょうか。

約2週間先の未来をゆく人からそう言われると、精神と感情の振れ幅がすごいのはある意味しょうがないのか、と少しほっとするようなしないような…。

 

マルタでは、政府から感染拡大防止の施策が次々と発令、厳罰化され、日に日に変わっていく。

そのたびに、生活を生き方をフィットさせていかなくてはならない。
そのために、毎日毎日マインドが変わる、精神的に感情的に揺さぶられる。
そして、3週間目頃からやっと、少しずつ平常に戻ってくる、らしい。

マルタではロックダウンから4週間経ち、少し日常が落ち着いた今、その方が感じるのは、
「マルタでの生活、特にゴゾで生活する人は、忙しかったこれまでの生活から離れ、本来の人間生活、マルタ人の暮らしに戻っただけのような気がする」と。

食料供給、特にゴゾ島は、地のものでまかなえる。
地元で取れる野菜や、自家製で作られるチーズやソーセージなどの加工品、ビールやワインに至っても生産しデリバリーも行なっています。

地の物を食べる。
家族と共に家で過ごす。
丁寧に暮らす。

仕事で忙しい毎日を送っているとおざなりになっていたこと。

それが元に戻っただけのこと、だと。

StayHomeは、マルタ島、特にゴゾ島では当たり前のことだったかもしれない。

その言葉を聞いて、ゴゾ島の手つかずの自然に囲まれ、太陽の動きに合わせて自然と共生するような暮らしを体験したことを思い出しました。

 

 

 

●日本とマルタ、コロナで直面する問題で唯一異なる点

 

日本では、仕事が無くなる・減る・形が変わる、など問題も出ています。

マルタでも同様に、仕事はテレワークに移行、レストランやお店は形態や提供方法を変更せざるを得ないなど、柔軟に形を変えながら進んでいます。

その中でも日本と異なる点は、仕事が無くなる・減ることにより「家賃が払えない」問題が、マルタではさほど大きな問題ではないように思います。

 

それはなぜか。

マルタは実は、持ち家率が非常に高い。

祖父母→父母→子供→孫と、家を先祖代々受け継ぎます。

ヨーロッパの他国でも見受けられる通り、マルタでも石を使い大昔に建てられた家は、隣と壁続きの家も多く、そう簡単に建て替えができません。

よって、外側はそのままで内装だけをリフォームして近代的にしたり整えたりという方法で、代々受け継いで住み続けます。

また、持ち家率が高い理由に、地価が高騰していることも挙げられます。

結婚したマルタ人カップルは、新居を構えたくとも地価が高く新築は不可能。

平均賃金12〜13万円ほどの安いマルタでは、賃貸物件であっても高額で生活費が苦しくなるため、結婚後もどちらかの親元に住み同居するパターンが多い。

しかし、今回のコロナ禍では、マルタ人の持ち家率の高さが功を奏したと言いましょうか。

・家族代々、一緒にStayHomeでいられる。
・仕事をできない間も、家賃を払う必要がない。

ということで、家賃が払えない問題で苦労している人は少なめ。

そもそも賃貸で家賃が払えるようなマルタ人は高給取りで、そう打撃は少ないように思います。

さらに、コロナ疎開することもなく、家族と一緒にいられ感染拡大も防げるという利点も。

 

では、心配なのは地元マルタ人より、マルタへ移住した他国の人たちです。

その人達は現在どうしているかと言うと、基本的に他国からの出稼ぎの人たちは「極力自国へ帰れ」と帰国を促されました。

しかし定住する移住者の人たちは、今も居続けている人もいるし、雇われの身ではなく、レストランやショップのオーナーでビジネスをして居を構える人はできる範囲で商売をしている人もいます。

私のガイドブックに載るレストランやお店で、テイクアウトや配達に切り替えて、どうにか商売を継続しているところも多い。

マルタの人口は、外務省WEBサイトによると約43万人、未だに2016年の情報が記されています。

実際は、48万人。

昨年2019年に大使に会った時に聞きました。

この4年で5万人も増えたのは、外国人の急増と言われています。

 

急増の理由は、経済政策や税制優遇で、iGaming・仮想通貨・eスポーツといった分野の企業が続々とマルタに会社を作り、他国の人たちがどんどん流入。

その他の理由として、出稼ぎに来る人達も増えました。
観光立国マルタは、レストランやホテルでも人手不足で、今は売り手市場です。

 

私が留学した2012年頃は、ヨーロッパ、アフリカ諸国の人たちはよく見かけました。

近年はインド、パキスタン、タイなど中央〜東南アジアの人たちも多く見かけるようになり、多国籍化がどんどん進んでいるのを街でも感じます。

彼らが多く働く場所は、レストラン、ホテル、そしてタクシーサービスBolt.。

私はBolt.を利用する際は、どこの出身か、なぜマルタで働いているのなど、本に載せるわけでもないのに、興味が湧きインタビューのように聞きまくります。

なぜマルタで働いているのか?に関しては、みなほぼ同じ答え。

自国で働くより稼ぎがいいから。

年に1回帰るという人もいれば、お金を貯めて仕送りするだけで精一杯、次はいつ帰って家族に会えるか分からないという人も多い。

他の家族もバラバラで他国で住み働くため、一斉にどこかで集まるほうが金銭面のみならずタイミング的にも難しいという人も。

そんな様々なお国事情や家庭事情を抱えてマルタに来た人たちは、留まったマルタで、そして自国に帰りどう過ごしているのか…心配になります。

 

ロックダウンから4週間経過。

外出自粛するのも飽きてきたマルタ人が、少しずつ外に顔を出し始めました。

原っぱで停まる車が増えたとも聞きます。

会えない時間を埋めるように逢瀬するカップルです。

乾燥した草ボーボーの未開の地の原っぱに、停車する車が点在する様子が想像できます…(何をしているかはご想像におまかせ…)

まさにマルタっぽい光景、行動だな、と。

 

ちょっと、オチが変になってしまいましたが(汗)

マルタに居るみなさまも、怒涛の事態で帰国されて大変な思いをされたみなさまも、行く予定をやむなくキャンセルされたみなさまも、様々な思いを抱え不安や心配は尽きませんが、どうか健康に留意して過ごされますように。

コメントを残す